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半世紀前からのタイムカプセル。「海からの贈り物」は自分の在り方、生き方を考える全ての人に示唆を与える良書です。

ライフシフト
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こんにちは。50歳を過ぎて人生の在り方を改めて考え直し、夢であった心理師へと方向転換を図っているひなこです。

今回は私が大学時代に英語の授業で読んだ「海からの贈り物」という本をご紹介したいと思います。原著だけでは理解できず、やむにやまれず訳本を買ったことが、この本と出会うきっかけとなりました。

10代終わりで読んだ時もいい本だな、と思っていたのですが、その後大体10年おきに再び気になって手に取る本です。人生に迷いを感じたとき、何かしら示唆を与えてくれる、とてもお勧めの本です。

「海からの贈り物」はあの飛行機冒険家リンドバーグの奥さんが書いたエッセイです

この本は、あの飛行機冒険家リンドバーグの奥様である、アン・モロー・リンドバーグが書いたエッセイです。当時、リンドバーグ夫婦はともに著名であり、アメリカのコネティカットで多忙な生活を送っていました。

アンは妻として、5人の子どもの母として、文筆家としての忙しい生活を送っているのですが、ある時、その生活から離れ、二週間、浜辺の宿に滞在します。その時に海を見て、自身の人生各ステージを浜で見つける貝たちになぞらえ、考えたことを8編のエッセイにまとめたものが本著になります。

そもそも良い本ですが、時代や著者の背景を知るとなお一層心に刺さります

Burger Love

本著は実に淡々とアンの思索がつづられています。それはまさに海辺の宿で、静かに一人ゆったりと過ごし、考えている雰囲気そのものです。私は読むたびに波音が聞こえてくる不思議な感覚になります。書かれている内容もアンの日常生活をベースに書かれているので、実に素朴で日常的です。

しかし、この本が書かれた1950年代という背景を知っておくと、その淡々とした文章の裏にある、彼女がきっと感じたであろう衝撃や、苦悩、喜びが具体的に理解でき、深みが増してきます。

1950年代は豊かさと大量消費の時代。フェミニズム運動も始まった。しかし裏には冷戦と人種問題が潜んでいた。

日本経済新聞

この本が書かれた1950年代のアメリカは、第二次世界大戦が終わり、誰もがアメリカンドリームを夢見ていました。そして「豊かなアメリカ」を体現する消費文化を謳歌していました。この時代は、「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」とも呼ばれるような繁栄をきわめた時代でした。まさに“古き良きアメリカ”でした。

付け加えるとフェミニズム運動が始まった時でもあります。性別によって決めつけられる社会的・家庭的な役割や、長い髪にかわいい笑顔といったイメージとしての女性らしさに抵抗をあらわす女性たちが現れ始めました。

しかし、その光の裏には影があります。

1950年代は政治的に大きな不安を抱えた時代でもありました。冷戦と赤狩り(レッド・パージ)です。冷戦とは旧ソ連との対立です。反社会主義、反共産主義をアメリカは唱え、激しく旧ソ連と対立しました。アメリカ国内でも共産主義に共鳴する人たちを激しく弾圧。それが赤狩り(レッド・パージ)です。自由の擁護の名のもとに自由の抑圧が進行した、と言っても良いでしょう。

もう一つの影は人種問題です。この時代はまだ黒人系アメリカ人に対する差別があからさまにあった時で、1964年に公民権法が制定されるまで、バスの座席は白人と黒人では別々に定められていたり、新興住宅地に黒人が家を建てられなかったり、同じ学校に通えないなどの問題が山積していました。

表面的に華やかでありながら、その裏には多くの苦しみや差別を受ける人達がいる。その苦しみや差別が国内に大きな溝を生み、不安定な社会状況を作る。現代にも形を変えて存在していますね。

夫:チャールズ・リンドバーグは有名人ではあったが、常識人ではなかった

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夫、チャールズ・リンドバーグは大西洋単独無着陸飛行に世界で初めて成功したことで知られる有名な冒険家です。大西洋単独無着陸飛行に発した「翼よ、あれがパリの灯だ!」の言葉でご存知の方も多いでしょう。

しかし、実際のリンドバーグは結構な奇人であったようです。主だったものをあげてみましょう。

(1)アンと結婚したのは、アンの実家がメキシコ大使を務めるような名家であったことが理由だったらしい。要はネームバリューが欲しかった。
(2)長男を誘拐殺人で亡くす事件に見舞われた。犯人は捕まり、死刑となったのだが、後々、実はリンドバーグが誤って長男を死なせてしまったのが真実では、と言われている。(3)長男を亡くしたことでマスコミに追われるようになったため、イギリスに移住。その時にドイツ人の女性と懇意となり、3人の子供を設ける。⇒本書出版2年後にDNA鑑定で判明。

(4)第二次世界大戦中はナチスの政策に共鳴。アメリカ議会で政府にドイツと中立条約を結ぶよう主張した。

こんな夫を支え続けることはさぞ大変であったろうと想像できます。ストレスや不信感で離婚してもおかしくないレベルなのに、最後まで連れ添い、看取ったアンには敬服です。(アンは、結婚後に自らも飛行機操縦術を習得し、夫の仕事を支えるほどでした)

回想録やエッセイで有名作家になった反面、満たされない思いを抱いたことは何度もあったであろうことは想像に難くありません。

半世紀前でも人生で直面する問題は同じ。だからきっと答えはここにある。

さて、本の中身について触れようと思います。本書は、序、海辺にて、にし貝、つめた貝、日の出貝、牡蠣のベッド、あおい貝、ほんの少しの貝、海を背にして、あとがきからなっています。全部で150ページに満たない短編です。その中でアンは以下のように現代人誰にも通ずる悩み・思いをつづっています。

(1)どれだけ多くではなくて、どれだけ少ないもので暮らすか。(にし貝)

(2)私たちは結局、みな孤独である。ひとりでいるということを、もう一度はじめから学び直さなくてはならない。(つめた貝)

(3)この世にたったひとつのものなど存在しない。あるのは、たったひとつの瞬間だけ、だ。(ひので貝)

(4)中年はほんとうに自分自身でいられる年代なのかもしれない。(牡蠣のベッド)

(5)現在よりももっと成熟した人間の繋がり、二つの孤独の出会い。(あおい貝)

(6)所有欲は、美しいものを理解することと両立しない。(ほんの少しの貝)

(7)「いま」と「ここ」と「個人」の問題。(海を背にして)

いかがでしょうか?どなたにも一つくらいは心に引っかかる項目があるのではないでしょうか。最初の項目は今の「断捨離」につながりますね。近年、コンマリ(近藤まりえさん)がアメリカで引っ張りだこになっているのも必然だったのかもしれません。

また、気になった部分だけ読むのもアリだと思います。
孤独感や虚しさを感じて悩んでるならばつめた貝を、人間関係、特に夫婦関係や家族関係で悩むならばひので貝を、子育て真っただ中の人や子育てがひと段落した人なら牡蠣のベッドを、精神的な成熟さを求める人ならばあおい貝をお勧めします。

女性向けで出版されていますが、男性が読んでも生きるヒントをもらえる本です

アン自身も書いていますが、最初は女性という立場から書かれていますが、次第にこれは男女や人種に関係なく、人間誰もがもつ普遍的な人生の課題について書かれています。そのため、男性でも腑に落ちることがたくさんあると思われます。

コロナ禍の中、人生を翻弄され、これからの生活や人生の方向性に悩んでおられる方々に是非一度読んでいただきたい一冊です。

ひなこ

50代前半未婚女子。療育関係に長年勤務し2022年春退職。80代の父を介護し看取りました。現在は公認心理師 と専門学校の生物の講師を兼業。アドラー心理学と認知行動療法、女性活躍推進コンサルタントを勉強中です。ここでは様々な生き方に関するお役立ち情報と耳や目に関わることについて発信しています。

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